筋トレを始めたばかりの方にとって、トレーニング種目の名前や筋トレ用語などは聞き慣れないものばかりです。
当たり前のように使われても意味が分からなければ混乱してしまいますよね…。
本記事では、関節の可動域を指す「ROM(レンジ オブ モーション)」という言葉について説明していきたいと思います。
ROMの考え方を理解して、より効果的なトレーニングを行っていきましょう!
本記事は以下のようなことを考えている人向けです。
- ROMって何の略なのか知りたい!
- ROMとは何か知りたい!
- ROMが筋トレにどう影響するのか知りたい!
- フルレンジとパーシャルレンジの違いが何か知りたい!
「TUT」についての記事も書きましたが、どうして筋トレ用語にはアルファベット3文字の単語が多いのでしょう…?
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可動域? “ROM” ってまず何?

まず始めに、「ROM」とは何を意味するかについてです。
ROMとは、“Range of Motion”(レンジ オブ モーション)の頭文字をとったもので、日本語では関節可動域と言われたりします。
Motion(モーション=動き)のRange(レンジ=範囲)なので、直訳すれば“動く範囲”とでも言いましょうか。
日本語で “関節可動域” と言われる通り、ROMは筋トレ用語としてはある種目においてどれくらいの範囲で関節が動いているか・動かすかというような文脈で使われます。
簡単な例では、腕立て伏せをするときどこまで身体を沈み込ませるか・どこまで身体を押し上げるかということを考えた場合に、“腕立て伏せのROMは~” といった具合に使われます。
筋トレにおける “ROM” とは?

ではROM(=関節可動域)がどのように筋トレで関わっているのでしょうか?
ROMが広い(=関節可動域が広い)ということは関節が動く範囲が多いということであり、言い換えれば動きが大きくなるということです。
動きが大きくなるということは、筋肉が大きく伸び縮みするということになります。
また、骨格筋は1関節で1つしかないというわけではなく、身体中を覆うようにたくさん存在するため、動きが大きくなればたくさんの筋肉が動く可能性があります。
これらは筋トレをする際にメリットとなるものでしょう。
筋肉が動く=関節が動く=筋肉が動く
骨格筋は言わずもがな骨に付着しているわけですが、関節を跨ぐことで動きを生むことが出来ます。
そして、骨格筋は関節を跨ぐ数によって単関節筋(1つの関節を跨ぐ筋肉)・二関節筋(2つの関節を跨ぐ筋肉)・多関節筋(2つ以上の関節を跨ぐ筋肉)と分類されます。
関節の数は動きの多様さを生み、1つの筋肉でも跨ぐ関節の数が多ければ様々な動きを生み出すことが出来ます。
逆を言えば、1つの関節を跨ぐ筋肉は1つとは限らないということです。
関節を大きく動かすことでより多くの筋肉をしっかりと動かして上げることが、トレーニングでは大切になってきます。
たくさんの筋肉が動く可能性がある
というように、身体にはたくさんの骨格筋があり、それぞれが様々な特徴を持っています。
ある動きをする筋肉に対して反対の動きをする筋肉もありますし、関節の可動域内で特定の範囲からより優位に使われるような筋肉もあります。
ですので、大きな動きのある運動をすればより効率よく多くの筋肉が鍛えられるとも考えられるというわけです。
全身をトレーニングして鍛えたいというのであれば、ROMという考え方を覚えて可動域を広く・大きな動きでトレーニングをすることはメリットになるでしょう。
ROM(可動域)は総合的に見なければならない

前項で可動域を広くとってトレーニングを行うことのメリットについて少し触れましたが、目先の目的によってROMの考え方とは異なるアプローチをとってしまう場合もあります。
一般的には、筋肥大と言って筋肉を大きくさせる目的で筋トレをする場合は可動域を広くとってトレーニングを行う方が良いとされています。
これは多くの研究・筋肉で示されている結果ですので、筋肥大が目的の場合では積極的に取り入れるべき考え方でしょう。
そして、筋肉が大きくなれば発揮できる力も大きくなるため、より重たい重量を扱いたい・筋力アップしたいという方にも当てはまるということになります。
しかし、この “より重たい重量を扱いたい” という目的は、筋トレにおけるROMの考え方を曇らせてしまいます。
可動域を制限すると高重量を扱える
というのも、関節の可動域を制限すると大きな力を発揮できてしまうので、重たいものを持ててしまいます。
“今ジムにいるこの瞬間、重たいものを持つ!” ということが目的であれば構わないのかもしれません。
ですが、“より重たいものを持ちたい・持つべき” というのは筋肉をより成長させるための考え方であって多くの一般トレーニーにとってはゴールではないはずです。
確かに負荷を上げていってトレーニングを行うことは成長するために必要な要素です。
しかし、特に初心者やまだ中級者レベルという方が、可動域を狭めて高重量を扱う=広い可動域では扱えない重量を扱うということにメリットはありません。
より筋肉を発達させるためにより高重量を扱う、ためにはより効果的なトレーニング方法で鍛える必要があります。
ROMはこの効果的なトレーニング方法に含まれる1要素だと思ってください。
筋にQ:なぜ可動域を制限すると高重量を扱えるのか?

既にトレーニングを行っている方は、可動域を制限(狭く)するとより高重量を扱えるということを経験的に知っているかもしれません。
なぜ可動域を制限すると高重量を扱えるのかというと、関節には至適角度というものが存在し、関節可動域内でより大きな力を発揮できる範囲があるからです。
至適角度は、筋肉が縮む方向と動かしているモノ(トレーニングで言うと、筋肉がついている骨)の動く方向が近い範囲です。
例えば腕を曲げようとすると、上腕二頭筋が縮む方向は当然筋肉が伸びている方向となります。
動き始めで前腕は肘関節を支点に回転運動をしていき、肘が90°に近いあたりで前腕が曲がっていく方向(回転運動の方向)が上腕二頭筋の縮もうとする方向と近くなります。
このあたりが上腕二頭筋の至適角度で、上腕二頭筋の発揮する力が回転運動に変換されやすい範囲です。
可動域を制限するということは、この至適角度内でトレーニングの動作を行うということですので可動域を広く使った場合より重たい重量を扱うことが出来ます。
パーシャルレップ?なぜトレーニーは可動域を制限するのか?
以上で説明したように、トレーニングはその種目で使用する関節の可動域を目いっぱい使って行うことがベストだと思われます。
フルレンジ・フル可動域でトレーニングを行うということはつまりそういうことです。
しかし、トレーニング方法の中にはパーシャルレップ法と言って前項で説明した、可動域を制限して(パーシャルレンジで)トレーニングを行う方法もあります。
パーシャルレンジとは、パーシャル(=部分的)なレンジ(=範囲)となるので日本語では可動域を制限することと訳すことが出来ます。
これまでの研究ではフルレンジ(フル可動域)で行うトレーニングの方が効果的ということが示されていますが、実は特別な目的のもとではこのパーシャルレンジも有効だと考えられます。
この “特別な目的” を理解することが出来れば、フルレンジで行うトレーニングよりも効果的に身体を鍛えることが出来るかもしれません。
筋トレをする際、パーシャルな可動域が活きる場面とは?
例えば、フルレンジでトレーニングをしていて10RMの重量を扱っていたとします。
当然8-9回あたりでは苦しくなっていき、あと1回出来るかどうかというような状態になります。
しかし、この重量はあくまでフルレンジで行うトレーニングの10RM重量ですので、パーシャルレンジではもう少し続けることが出来るかもしれません。
筋肉の成長に有効なRepとは限界に近いところまでのラスト数Repと言われています。
ですので、フルレンジでは苦しくなった重量をパーシャルレップで引き続き限界に近いところまで行えば、この効果的なRep数を稼ぐことが出来るかもしれません。
つまり、いわゆる“筋肉を追い込む”ことが可能になるということです。
パーシャルな可動域で鍛え分ける?
また、「大きな動きのある運動をすればより効率よく多くの筋肉が鍛えられるとも考えられる」と述べたように、フルレンジでトレーニングを行う場合では複数の筋肉が動員する場合があります。
つまり、逆を言えばパーシャルレンジでトレーニングを行うことでその動作を行う主働筋にフォーカスすることが出来るということです。
ベンチプレスを例に挙げてみましょう。
ベンチプレスは大胸筋をメインで鍛える種目ですが、三角筋の前部や上腕三頭筋も多く使われます。
筋肉にはより大きな力を持つ方が優先的に使われる傾向があるので、これらの3種の筋肉では一般的に大きいことが多い大胸筋が優位に使われると考えられます。
しかし、普段の生活やこれまでのスポーツ経歴でより多く使われてきた傾向にある筋肉はおそらく上腕三頭筋でしょう。
胸のトレーニング経験がある人を除けば、腕の方が発達しており意識して使いやすい筋肉となってしまっている可能性があります。
するとどうなるかと言えば、ベンチプレスで上腕三頭筋がより優位に使われてしまうといったことが起きます。
ベンチプレスをしていて腕が先に疲れてしまうという方は少なくないと思いますが、その原因としてフォーム以外にはこのような原因も考えられます。
ベンチプレスのパーシャルレンジで大胸筋は有効な範囲でストレッチ・収縮が行えています。
つまり胸を特にフォーカスしたい場合、パーシャルレンジで行っても十分に効果はあると考えられるということです。
可動域は人によって異なる

特に忘れてはならないのは、関節の可動域というものが人によって異なるという点です。
一般的に言われる身体が柔らかいという状態はこの関節可動域が広いという状態です。
かと言って、柔軟性が高い人と同じレベルの広い可動域で “トレーニングを行わなければいけない” ということではありません。
なぜなら、関節の可動域は人それぞれ違いますし、なにより可動域を超えて運動をしてしまうとケガのリスクが高まるからです。
大切なのはなるべく可動域を広くとってトレーニングを行うこと・可動域を広く保つこと・可動域が広くなるようにストレッチしていくことであって、“〇〇くらいの可動域をとって行う” という風に一律に定義されるものではありません。
可動域とケガのリスク
関節可動域が広ければ動きをより大きくすることが出来ますが、身体が硬い場合では運動で関節の動く範囲は小さくなります。
となると、身体の硬い人は無理にでも広い可動域をとってトレーニングを行おうとしてしまうかもしれませんが、そんなことはしないでください。
可動域を広くとってトレーニングを行うメリットとして、「大きな動きのある運動をすればより効率よく多くの筋肉が鍛えられるとも考えられる」ということを何度も挙げていますが、これは単純に力を発揮する筋肉だけではなく動きを安定させる筋肉も含みます。
関節は骨と骨のつなぎ目にあたる部分で筋肉はそれを支える役目を果たしていますので、それらの筋肉(スタビライザーとも言う)も同時に鍛えていくことがケガの防止につながります。
言い換えると、柔軟性があってもスタビライザーが一緒に鍛えられていなければケガのリスクはあるということです。
筋トレは(自分の)フル可動域で!

大切なのはバランスです。
身体を鍛えるのであれば、筋力を発揮するメインの筋肉にもそれを支える補助的な筋肉にも、そしてそれらが有効に使われる可動域にも注意してトレーニングを行っていくことが成長への近道となるでしょう。
身体が硬い・関節可動域が狭い場合、自分の出来る範囲ギリギリまでしっかり可動域をとってトレーニングを行い、徐々に柔軟性を高めていけばよいと思います。
始めから自分のできない可動域でトレーニングを行っている人を見て真似をする必要はありません!
ということで、
- ROMとはRange of Motion(レンジ オブ モーション)の略である
- ROMとは関節の可動域のことである
- 広くとることで筋肥大に効果的である
- スタビライザー(動きを支える筋肉)も鍛えることが出来る
- 可動域の広さには個人差がある
ということでした!
ROMの考え方をしっかりと理解して、効果的なケガをしないトレーニングを行っていきましょう!
それでは今回はこれで失礼します。
ありがとうございました!